世界思想平成13年5月号インタビュー記事(テキスト版)

2018年05月08日

世界思想・平成13年5月号に掲載された記事を読みやすい形で編集しました。

 

今、政治を語る(7)

市民ボンティアで環境浄化を

小田原市議会議員 加藤仁司

 

青少年育成法制定の意見書

 加藤仁司市議のホームぺージを見ると、後援会ニュース「あかつき」3号に「青少年育成基本法の実現に奔走!三月定例会にて国への意見書提出採択される」の記事があった。青少年の保護育成は条例では限界があることを述べ「国において青少年を見守り支援すべき大人の責務を明確にし、理念を打ち立て、最重要でかつ普遍的な対象を網羅した基本法ともいうべき法の整備が早急にはかられるべきだと考えます」と書かれている。

 昨年三月二日、国会に提出する青少年育成基本法制定の意見書は、加藤さんが所属する粋誠会の四人が提出者となり、最終日の小田原市議会本会議で賛成多数で採択された。加藤さんはさらに議決を増やそうと、周りの地方議員に声を掛けている。

 三月の予算委員会で加藤さんは、小田原市がスタートさせるスタディーサポート・スタッフとメンタル・フレンドについて質問した。前者は小学校一年の三十五人以上のクラスにスタッフとして教師をー人配置して、学級崩壊を防ごうというもの。そのため、教員免許を持っている人を公募する。しかし、それによって担任が授業しにくくなるのではないか。教員の資質の低下をもたらし、子供たちの間に混乱を招く恐れはないのか。

  メンタル・フレンドは長期の引きこもりの子供を対象に、公募した学生を中心にニ十代の若者を友達として送り込むもの。確かに成果を上げているところもあるが、十分な調査をしないで導入するのは安易ではないか。教育を見る加藤さんの目は厳しい。

 

ボランティアで環境浄化

 加藤さんが初めて教育に疑問を持ったのは中学生の時、国鉄がスト権ストを打ち、同時に日教組もストを行ったことからだ。朝、登校すると、生徒は体育館に集められ、今日は国鉄がストをしているため先生方が来られないので帰宅するように言われたが、後でテレビや新聞を見ると、日教組もストをやっていた。「とんでもないなという気持ちを持ちましたね。公立高校でも組合の存在が気になり、選挙権を持つようになると何とかしなければいけないという思いが強くなりました」と語る。

 大学卒業後、亀井善之議員の秘書を十年務める中で、改めて教育が国の基本だと考えるようになった。「戦後教育はこれでいいのか、ひずみを正したい」という思いから平成七年に小田原市議に立候補。阪神・淡路大震災の年だったので、公約には教育と防災を掲げた。しかし、地盤、看板、かばんがあったわけではないので、選挙運動は「スクーターで遊説して回りました」と笑う。

  議員になると同時に神奈川県警の少年補導員になった。補導員は警察といっしょに月に三、四回、夜間七~九時、繁華街をパトロールする。通学時間に駅前を見回ることもある。非行予備軍的な少年たちを指導するのが目的で、制服でたばこを吸っているような生徒を見つけると、声を掛け、注意を促す。「親のことを聞くと父親の名前すら知らない子がいたり、母親は完全な放任状態など、家庭環境に恵まれない子が多いですね」と顔を曇らせる。

  インターネットの有害情報を監視するサイバーパトロールにも参加し、有害サイトの摘発を行っている。「あまりの数の多さに驚きます。いくら摘発しても、いたちごっこの感があります」と嘆く。

 神奈川県警が主催した研修会には、ガーディアン・エンジェルスの人が来て情報提供をしていた。加藤さんも「自治体で組織をつくるよりも、ボランティア的にやった方がいいのでは」と感じている。

 青少年健全育成の組織も名誉職になってしまいがち。「古い組織ではインターネット時代に対応できません。むしろ、ボランティアが機動的に動けるような社会づくりが必要です。有害環境も市民の手で守れるような仕組みを作るのが政治家の使命ではないか」と語る。

 有害なチラシや看板などを撤去するには法的な問題をクリアしないといけない。NTTや東京電力の電柱からの撤去には会社の許可が必要で、NTTは補導員に管理人委嘱証を発行している。警察や行政に任せるのではなく、市民がボランティアで撤去できるようにした方がはるかに効率的だ。

 

グローバル時代に対応

加藤さんは、学級崩壊の背景には家庭崩壊があるとみている。「母親が幼児の養育よりも仕事を優先させるのはおかしいのではないか。少なくとも物心がつくまでは育児を他人に任せるのではなく、愛情深く育てるようにしてほしいですね」と話す。小田原市が力を入れている環境にしても福祉にしても基本にあるのは教育なのに、子供が学校を出ると教育問題に関心を失う人が多いのが加藤さんの悩み。小中学校の子供がいる議員は三十二人のうち数人で、どうしても関心が薄れがちだ。

  加藤さんは長女が中学一年で長男が小学四年。議会で質問すると、教育委員会は意外に学校の状況を正確には把握していないので、直接、学校に入り込んでいくしかないという思いから、小学校のPTA会長を引き受けている。

 「グローバルな時代に対応できるよう、国家は指針を示すべきです。児童買春・児童ポルノ処罰法ができたので、国からの通達を受けて警察が予算化し、そうした間題に取り組めるようになりました。同じように、青少年育成法が制定されると自治体でもやりやすくなります。そうしないと有害環境は増えるー方ですよ。地方分権で国と地方が対等になる時代なら、意見書を提出した地方の議決を国は重視してほしい」と訴えている。